
2026年の半年で80万台以上と日本でもテスラが爆売れ、トヨタ新型bZ4Xや日産新型リーフも売れている。電気自動車を良く見かけるようになった。電気自動車オーナーの私としては、電気自動車がユーザーが増えるのは嬉しい限りだ。
電気自動車を買った人が迷うのが、外での充電をどうするかではないだろうか。
思っていたよりも日本でも急速充電器の設置が広がっており、利便性に問題は無いのだが、世界基準で眺めてみると問題点が見えてくる。
今後、電気自動車の普及が進むとこのままでは困ったことになりそうだ。
米国の充電ステーションマップ
まず、こちらを見てほしい。

これは米国エネルギー省が公開している充電設備マップだ。充電仕様(DC急速充電など)やコネクタ形状を指定して全米全土の電気自動車充電インフラを検索できる。2026年7月11日時点で、充電ステーション数は83,097か所、EV充電口はなんと25万口以上ある。マップはインタラクティブに操作可能で、試しにサンフランシスコを拡大していみると、こんな具合だ。

さらに、ポップアップされた右下にある「+More」をクリックすると、詳細な内容が表示される。

また、表示情報と実際が異なる場合は、「Report a change」をクリックすると修正申請が出来る。
このマップを政府レベルで整備して無料で公開しているのだ。
日本の充電ステーションマップ
次に以下を見てほしい。


これは日本のゴーゴーラボという民間スタートアップ企業が公開しているサイトだ。現存する日本の包括的な充電設備マップはこれしか無い。ユーザーからの報告を元に作られたマップであるが、非常に充実していて役立つ。ただ残念なことに、アプリ版は廃止されてしまった。
2026年3月19日(木) 15時
アプリ版GoGoEVサービス終了のお知らせ
(中略)
現在、EVを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
GoGoEVは、開発・運営のリソースをWEB版に集中させることで、この状況に対応したいと考えております。
また、収益モデルが確立されていない状況において、安定したサービスを今後も継続させていくためにも、アプリの配信を停止するという決断に至りました。
(後略)
GoGoEV『アプリ版GoGoEVサービス終了のお知らせ』よりhttps://ev.gogo.gs/news/detail/1773880663
米国と日本の充電口数の比較
これらによれば充電拠点数は28,682か所、EV充電口は55,811口。国土の広さを考えるとアメリカの5分の1という充電口数が多いのか少ないのか単純比較は出来ないが、急速充電器の口数で言うとアメリカが74,800口に対して日本は15,873口。そして何より、アメリカの急速充電器の場合、150kW超350kW未満の充電器が54,030口、350kW以上の出力の充電器が13,097口ある(日本はテスラ専用のスーパーチャージャーを除くと何れもゼロ。テスラのスーパーチャージャーはGoGoEV掲載分で1263口、このうち150kW超は8割ほどと思われる)。
充電器出力の比較
充電ステーションの数もそうだが、充電器の出力についてもアメリカは日本よりかなり進んでいると言えるだろう。充電器の出力が高いということは何を意味するかというと、充電に要する時間が速いということだ。日本でのこれまでの主流の急速充電は50kWだったので、アメリカの350kWであれば単純計算で7倍のスピードで充電完了することになる(実際はそれほど単純ではないし、自動車側が対応していないといけない)。
充電インフラ整備の諸問題
そして何よりも日本が遅れていると危惧されるのは、こうした充電マップの公開情報すら政府はおろか大手の民間企業でも持っていない点だ。ユーザーは充電インフラ企業各社のアプリを複数インストールし、それぞれのアプリで表示されるマップを確認するか、GoGoEVのような(有難い)Webサイトをスマホのブラウザで見ながら確認する必要がある。
もっと重要なのは、一覧して充電マップが無いことで、そして、世界の情勢を知らされないことで、日本の充電インフラが数の面でも充電出力の面でも大きく遅れを取っていることに、ユーザーすら気付きにくいことだ。
日本では150kW超級の充電器を普及させようという動きがようやく始まった感があるが、その一方で、中国のBYD社はフラッシュ充電と称する1000kWの充電設備フラッシュチャージャーを既に投入しており(関連記事)、2026年末までに中国国内20,000か所(40,000口)を設置予定である。日本は150kW器がおよそ500台程度あるだけである(テスラを除く)。これでは、電気自動車の利便性は上がらない。
このように、日本の電気自動車不人気の理由は、単に自動車の性能の問題だけではなく、充電インフラのガラパゴス化が大きな要因になっている。日本では2026年夏にようやく350kW器1基(2口)が海老名サービスエリア上り線に設置される予定になっている(関連記事)。今年日本で発売される最新の電気自動車は400kW対応車なのにである。インフラの方が後追いでは、普及が進まないのも無理はない。
理想はBYD社のように、1000kW超の充電器であり、これであれば満充電に数分しか要しない。BYDは欧州でもメガワット級、および最新の最大1500kWシステムの展開が本格化し始めている(関連記事)。
電気自動車は充電に時間が掛かるであるとか、長距離に不向きだというのは、自動車そのものの性能だけではなく、インフラの整備状況の遅れによるものなのである。
超急速充電が送電網に与える影響への対策
とはいえ、1,000kWを超える超高出力充電器を大量に設置すると地域の電力網に負荷がかかることになる。そこで、BYDはエネルギー貯蔵システム(BESS/据置型バッテリー)をステーションに併設する計画をセットで進めている(関連記事)。夜間などのオフピーク時に電力を蓄え、充電時に一気に放出することで、既存の電力網に過度な負担をかけずに安定した出力を維持できる設計になっているのだ。エネルギー貯蔵システムに太陽光パネルを併設すれば、自然エネルギーを活用しやすい環境構築にもつながるのではないか(日本の太陽光発電は日中の電気が余って無駄に捨てているのが現状だ[参考])。
日本政府の対応と、これからへの提言
日本政府(経済産業省や国土交通省など)は、一般ドライバーが充電スタンドを探すための「消費者向けリアルタイムマップ」を政府自ら直接開発・運用しているわけではないものの、「充電インフラの最適配置」や「自治体・事業者の設置計画」を強力に支援するための【行政・事業者向けの高度な需要予測マップ】の策定やデータ整備に国や自治体レベルで本格的に動いている形跡はある(関連資料)。東京都でも同様の動きがある(関連記事)。
しかし、これから電気自動車を普及させるというのであれば、電気自動車購入者や充電器設置事業者に補助金を配布して終わりということではなく、設置・故障状況を含め常に最新情報が共有される情報公開データベース(データベースがあればマップも作れる)の構築はもちろん、ユーザーフレンドリーな充電環境の構築(どれだけの出力の充電器をどこに配置すると効率的か、充電ステーションに求められる設備や環境は何か)といった点に重心を置いて計画に積極的に関わって欲しいものだ。
全てを民間まかせにするのではなく、ベースとなる構想や充電器規格や充電操作手順の統一化など、ユーザーが使いやすい仕様の標準化を主導するのは政府でないと出来ないことだと考えている。
これからの新たな自動車環境の構築に向けて、政府の取り組みに期待したい。

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